冬になると自然と手が伸びる吸湿発熱インナー。その代表格ともいえるミズノの「プレサーモ」が、プロジェクトXで取り上げられました。
ただ暖かいだけではなく、なぜこれほど長く支持され続けているのか。その背景には、素材そのものの常識を疑い、何度も壁にぶつかりながら改良を重ねてきた開発者たちの存在があります。
番組では、プレサーモ誕生までの試行錯誤や、スポーツメーカーと繊維メーカーが手を組んだ開発の舞台裏が丁寧に描かれていました。
この記事では、プレサーモとはどんな素材なのか、誰がどんな発想で生み出したのか、そして吸湿発熱の仕組みまで、放送内容をもとにわかりやすく整理していきます。
プレサーモとはどんな素材なのか
プレサーモは、体から自然に出る水分を吸収し、その際に発生する熱を利用して暖かさを生み出す吸湿発熱素材です。
寒い冬でも無理に着込まなくて済み、動いてもムレにくい快適さが特徴とされています。
単なる防寒素材ではなく、「人が動くこと」を前提に設計されている点が、他の冬用インナーと一線を画すポイントです。
スポーツシーンはもちろん、日常使いでも違和感なく着られる理由が、素材設計の段階から考え抜かれていることにあります。
プレサーモ開発を主導したミズノの技術者たち
プロジェクトXで印象的だったのは、プレサーモが特定の天才一人によって生まれたものではないという点でした。
\ NHK総合「新プロジェクトX」に登場🔥 /
12/13 20:00~放送の 「新プロジェクトX」肌着革命~発熱で常識を変えろ~
で、ミズノの吸湿発熱素材ブレスサーモの開発について放送されます。
どのようにブレスサーモは生まれたのか。ミズノ社員の挑戦をぜひ、ご覧ください!… pic.twitter.com/DEa1L66dD4— MIZUNO ライフスタイル (@lifestyle_mzn) December 12, 2025
ミズノの開発現場では、複数の技術者が関わり、それぞれの専門性を持ち寄りながら素材改良が進められていきます。
うまくいかない試作、社内での慎重な意見、コストや量産性の問題。
そうした現実的な課題を一つずつ乗り越えていく過程こそが、プレサーモという素材を“使える商品”へと押し上げていきました。
荻野毅(ミズノ)|常識を疑った開発発想の原点
荻野毅さんは、もともとミズノでスキーウェアの開発に携わっていた技術者です。
極寒の環境で選手を守るウェアを考える中で、「寒さは重ね着で防ぐもの」という当たり前の発想に疑問を持ちました。

引用元:日本衣料管理協会
そこから生まれたのが、「繊維そのものが熱を生み出せないか」という着想です。
当時は衣料用として前例の少ない発想だったため、社内でもすぐに理解を得られたわけではありません。
それでも荻野さんは、スポーツメーカーとして培ってきた視点を信じ、素材レベルからの挑戦を諦めませんでした。
この“疑う力”こそが、プレサーモ開発の出発点だったと言えそうです。
住谷龍明(東洋紡)|吸湿発熱を糸にする技術の壁
もう一人、欠かせない存在が東洋紡の技術者・住谷龍明さんです。
吸湿発熱という現象が確認できても、それを糸として安定して使える形にするのは全く別の難題でした。
N38と呼ばれる繊維は、発熱性能が高い反面、硬く加工しにくい性質を持っていました。
編みにくさ、切れやすさ、量産時のバラつきなど、現場では課題が山積みだったとされています。
ミズノ側とのやり取りを重ねながら、素材の改良を続けた結果、ようやく衣料として成立する品質に近づいていきました。
スポーツメーカーと繊維メーカーの共同開発がなければ、プレサーモは誕生しなかったかもしれません。
プレサーモが完成するまでに越えた技術的課題
プレサーモ開発では、発熱性能だけでなく「着心地」「耐久性」「量産性」という現実的な条件も求められました。
試作品は何度も作り直され、そのたびに改良点が見つかります。
開発チームは、失敗を重ねながらもデータを積み上げ、素材の微調整を繰り返していきました。
その積み重ねが、現在の柔らかく、扱いやすく、長く使えるプレサーモにつながっています。
プレサーモの仕組みとは?
プレサーモ最大の特徴は、体から出る水分を熱に変える吸湿発熱性です。

わずかな水蒸気でもしっかり吸収しながら、発熱し、同時に水分を外へ逃がします。
この「吸湿・発熱・放湿」のバランスが優れているため、冬のインナーとして着用しても、蒸れにくく快適な暖かさが生まれる構造になっています。
吸湿発熱素材プレサーモ(N38)
吸湿発熱の原理は、化学的にはそれほど複雑ではありません。
水分子が繊維に取り込まれるとき、吸着熱(ソープションヒート)という熱が発生します。
【 “第2の皮膚という革命へ” 】吸湿発熱繊維(ヒートテックなど)肌着革命。まずはミズノの荻野毅「N-38(ピンク色)弱い繊維」だが「羽毛の3倍の発熱」を見出した(#ブレスサーモ の原点)東洋紡の住谷、糸を紡ぐ服部、色の開発で皆本が加わった #新プロジェクトX #N38 #肌着革命 #ヒートテック へ pic.twitter.com/71s5gz1mUR
— わび@さび (@think_literacy) December 13, 2025
プレサーモではこの吸着熱がより効率的に発生するよう、特定の繊維構造を採用している点が特徴です。
また、熱を留めつつ、こもらせない構造になっているため、
「暖かいのに快適」
というバランスが実現されています。
プレサーモとヒートテックの違いとは
吸湿発熱素材といえばユニクロのヒートテックが有名ですが、プレサーモとは構造的な違いがあります。
ヒートテックは、レーヨンを中心に発熱性を高めた素材。
一方のプレサーモは、発熱量よりも“快適性の維持”に重点を置いている点が特徴です。
そのため、汗ばみやすいシーンでも蒸れにくく、冬のスポーツシーンで高い支持を得ています。
プレサーモ誕生秘話
番組で強く印象に残るのは、華やかな成功ではなく、地道な改良の連続でした。
失敗を否定せず、次の挑戦につなげる姿勢が、開発の現場にはありました。
「選手の体を守るために、もっといい素材を作りたい」
その思いが、長い時間をかけてプレサーモを完成へと導いていったのです。
プレサーモ開発者とプロジェクトXまとめ
プレサーモは、
・発想の原点を生んだ荻野毅(ミズノ)
・技術的課題を乗り越えた住谷龍明(東洋紡)
をはじめとする、多くの技術者の挑戦によって生まれました。
プロジェクトXを通して見えてくるのは、素材開発の裏側にある人の物語です。
普段何気なく着ているインナーの向こう側に、これほどの試行錯誤があったと知ると、見え方も少し変わってくるのではないでしょうか。



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